「何を言っているのかちょっとわからない」かもしれない。いや、もっとわからないのは、それを聞かされた私たちだ。
ある平日の夕方、某モールのローカルフードエリアでいつもの調子でうろうろしていた。もはや完全に日本人の気配を消失している私たち家族はすぐにでも諜報活動ができそうなぐらいローカルに馴染んでいて、なんならうちの旦那なんて人混みに見失ってしまいそうなぐらいだ……溶け込みすぎて。
まあなんだ、声を発さなければ私たちに「ニホンジン?」と聞くような人はもはやマレーシアにはいないかもしれない。
けっこう大きなモールなんだが、人も多い。
日本人もいるのだろうけど、そんなジロジロ人のこと気にしながら歩かないからな。知らん。
そしてその日本語は突然聞こえてきた。
「ベトナムはつかまった……」
へ?
そのはっきりとした日本語を話していたのはオッサン(私より若いとは思う)で、偽ブランドの聖地ペタリンストリートで売ってるパチさ炸裂系の人気スポーツブランド(これ、多分ブランド名書くと特定につながるのでやめとくw)のTシャツに半パンに身をつつみ、これまた違うスポーツブランドのサンダル(言い方悪いが便所サンダルみたいなやつ)をつっかながらゆっくり立ち止まっていた。
空耳かと思い、隣にいた子供に「今さ、『ベトナムはつかまった』って聞こえた?」と即尋ねたら「うん」と答えた。
ベトナムはつかまった
ベトナムはつかまった
ベトナムはつかまったぁぁぁぁぁ???
電話で話すときは相手が確定しているので主語がないのはわかる。
が、考えようによっちゃ聞き捨てならないセリフのようにも思える。
世界を股にかけるビジネスマンが出張できてオフの日だが仕事が詰まっていたとも考えられる。
だが、ここは東南アジア。
最近特殊詐欺の拠点になったASEANの国も多い。
アジトがガサ入れにでもあって、幹部(ベトナムはつかまったオッサン)への報告を受けたことに対しての言葉ともとらえられる。というすごい妄想が止まらん。
それにしてもオッサンはまさかこんな至近距離にゴリゴリの日本人がいるとは思わず、ノールックでその言葉を発したのだろうか。
気になったので子供が「やめとけ」と制止するのも厭わず、ちょっと尾行しようと、その「ベトナムはつかまったオッサン」の後を追ってエスカレーターの方に行こうとしたら、その場を離れていた旦那が戻ってきて「肉まん買うけど6.5リンギなので現金で払うから10くれ」とかややこしいことを言い出してしまい見失ってしまった。
なぜぇなぜぇ、じゃなくて、「ベトナムはつかまった」って、なにぃなにぃなんだよ……。
鬼ごっこじゃないのはわかるが、おまえは一体誰だったんだ?っておまえこそ、誰だよって話だが。
いや、仕事でアテンドとか探していてベトナムは手配できた、みたいな話じゃないかと思いますけどね、たぶん。知らんけど。