自分で読み返してもトラウマのような痒みが蘇ってきそうですが、それを劇的に救ってくれた軟膏についての話です。
キンカンは、確かに効くには効いたのですが、持続性がない。
翌日になると手強い痒みが戻ってきます。
ワトソンズに行って、適当な痒み止めクリームを買ったのですが、こちらも効いてんだか、効いてないんだか微妙な感じ。
このイタチごっこのような痒みの中、私は作家の沢木耕太郎さんが書いた「深夜特急」のエピソードを思い出しました。
沢木さんが訪れたインドかどこかで高熱がでて、もうダメかと思った時、宿の人がくれたインドの薬を飲んだら治ったというものです。
要は「その土地で患った病は、その土地の薬が効く」というような話でした。
改めて家の薬箱を見てみると……これこれこれ!忘れていたよ!というものを発見しました。
我が家では通称「中華軟膏」と呼ばれている謎の塗り薬です。
こうして間接照明の元で撮影すると、なんだかオシャレに見てくるから不思議です。
容器のフタに「アレルギー、かゆみ止め Chinatown」と書いたのは私です。
実はこの軟膏ですが、忘れちゃったけど何かに効くみたいな薬と共にチャイナタウンの露店で売っていました。
その時はどこも痒いとこはなかったので「アジア感満載の怪しげな店だな」とチラ見して通り過ぎました。
帰りにもう一度通った時に、冷やかし半分で店主と思われるおばさんと話をしました。
おばさんが熱く効能を説明してくれました。「じんましん、アレルギー、なんでも効くよ!」
でも成分とか一切書いていません。
記憶では値段は10RMだったかな。
「あなた日本人?」さらにおばさんはA4サイズのチラシをくれました。
そこには手書きでこの軟膏をリコメンドするコメントがびっしり書いてありました。
要約すると「本当にこの薬効いたので、超おすすめです。私はその効き目に感動して、ボランティアで日本語これを書いたただの通りすがりです」みたいな感じでした。
う〜ん、効くのかもしれないけど、なんかコワイな……。
これが正直な感想でした。
そこに中東系の男性がいきなり来て3つぐらいまとめて買っただけではなく、若干ひいてる私に向かって「これ名薬だよ」と言い残して去っていきました。
う〜ん、効くのかもしれないけど、今の人、サクラ……?
結局買って帰りました。
そうだろうなとは思っていましたが、家に帰って家族に見せると、「またか」という薄いリアクションがかえってきました。
基本的に家でこういうのをおもしろ半分で買ってくるのは、私しかいないからです。
しばらく出番はなかった謎軟膏ですが、ちょっと私にちょっとじんましんみたいのが出た時に、塗ってみました。そして今までちゃんとキープされていたということは、たぶんよく効いたんだと思います。
しかしその後、我が家には蚊も出ないし、そんなに使うものじゃないので、その存在はすっかり忘れられていました。
ところが今回は切羽詰まった痒みに悩まされているあまり、家族全員でこの中華軟膏を奪いあうように塗りまくりました。マレーシアの痒みにはマレーシアの軟膏が効くということだけはよくわかりました。
イライラする痒みから一発で劇的に解放されたのはスゴイのですが、家族全員、口には出さないけど、なんとなく思っています。
「効くのはいいけど、これ何入ってんだろ……」